[消滅時効Q&A8 保証人の主債務の消滅時効の援用]

 

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   消滅時効Q&A8 
保証人の主債務の消滅時効の援用

消滅時効に対してよくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。

      

Q8
私(A)は、知人BがZ銀行から融資を受ける際に頼まれてBの保証人になりました。
Bの返済方法は毎月の分割です。
Bは最初のうちは払っていたのですが、だんだん払わなくなりました。
私は、Bの保証人として(Z銀行との間で保証債務の分割の弁済の約束を交わして)毎月Z銀行に支払いをしています。
そのうち、Bが返済をしなくなって消滅時効の期間が経過したらBの債務は消滅時効により消滅するのでしょうか?

A8

 

BさんがZ銀行から借りた金銭(債務)について、AさんがZ銀行との間で保証契約を締結し(Bさんの債務返済を)保証する場合、Bさんの債務を主債務、Aさんの債務を保証債務といいます。

主債務が弁済等により消滅した場合、保証債務も消滅します。
(保証債務の付従性といいます)

具体例

Aさんの事例で、具体的に説明します。

Bさんが支払期日に返済をしないで、消滅時効の期間が開始されたのが平成20年5月31日だとします。

その間、時効の完成猶予又は更新に該当する事由がなかった場合、Bさんの債務である主債務は平成25年5月31日に消滅時効が完成します。

そして、その翌日以降Aさんが主債務の消滅時効の「援用」をすれば、主債務は消滅します。
(保証人は主債務の消滅時効の援用をすることができます。
 大正4年7月13日大審院判例)

時効の援用とは
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張すること。
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅する。

  

主債務が消滅することにより保証債務も消滅するのでAさんは返済義務はなくなります。

Aさんが保証債務の弁済を行っていた場合はどうなるのでしょう?

例えば、上記事例でAさんが平成24年から保証債務を毎月弁済し、最後の弁済が平成28年5月31日だったとします。(その後、弁済していないとします)

そうした場合、Aさんの保証債務の消滅時効の期間が開始されるのは、(Z銀行とAさんの間で取り決めた分割の約束で「毎月末の弁済期日に1回でも不履行があれば、その日から債務の全額を弁済する義務を負う」と交わしていたとすれば、次回の弁済期日である6月30日に弁済がなければ債権全体の最後の支払い日が6月30日となる。→債権全体の消滅時効が開始)同年6月30日が消滅時効の起算点となります。

{消滅時効の期間開始の日は7月1日となります。(民法140条)
詳しくは「消滅時効の期間計算 」をご覧下さい。

そして時効完成猶予又は更新事由がないまま期間が経過すると
(期間満了日は民法143条2項により6月30日となります}
5年後である令和3年7月1日から消滅時効が完成したことを主張できます。
Aさんの債務は商人である銀行との保証契約なので商事債権となり消滅時効の期間は5年間となります。
(旧法の説明です。 令和2年4月1日(民法改正施行日)よりも前の時期に借入した債権については「商事債権の消滅時効」として5年間となっていました。同日以降は、法改正により「商事債権の消滅時効」という概念はなくなりました)
よって平成28年の5年後の令和3年となります。

余談ですが、信用金庫は商人ではないのでご注意下さい
法改正後(令和2年4月1日)以降は「商事債権の消滅時効」という概念はなくなり一律民法166条の通りとなります
 (新法では、貸金業者であろうが個人であろうが、区別なく消滅時効の完成する期間は、「権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時より10年」となります。
権利を行使することができるというのは、例えば金銭貸付で支払期日が経過したことにより「貸金を返してください」と請求できることをいいます。
債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、5年経過によりほとんどの場合消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。)

つまりそのとき(令和3年7月)まで保証債務の消滅時効の援用をできないと言うことになります。
その場合、消滅時効の完成している「主債務の消滅を主張」できるのでしょうか?
つまり保証債務の消滅時効の「完成猶予又は更新」は主債務に影響を与えるのかという問題です。

この問題の答えは民法153条(新法)に定められています。
民法153条3項
「 前条(債務の承認)の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。」

つまり、保証債務における時効の「完成猶予又は更新」はAさんとZ銀行との間においてのみ効力を有することであり、BさんとZ銀行との間の主債務には影響しないと言うことです。

そして、上で説明したように「保証人は、主債務の消滅時効を援用できる」のですから、Aさんは、たとえ自分が保証人として、弁済をして消滅時効を更新していたとしても(この場合は 保証債務の時効の更新)主債務には影響を与えないので、主債務は時効を援用できる状態であり、Aさんは主債務の消滅時効を援用し(主債務の効果は保証債務に及ぶので)自らの保証債務も(主債務とともに消滅するので)支払い義務が無くなります。

{民法153条の定めの特則として主債務に消滅時効の更新があった場合は保証債務も更新となるので注意してください。
「民法457条1項:主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」}

「時効の完成猶予」とはある事由(事由とは物事の理由・原因、又はその事実)が発生した場合に、一定期間時効が完成せず、猶予されることです(旧法では「時効の停止」といいました)

「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)とは、時効期間が進行中に、ある状態が生じた場合に時効期間がリセットされ、再びゼロからスタートすることになることです。(例: 消滅時効期間が5年の場合、もう3年経過していて、あと2年で消滅時効が完成するようなときに、更新があると3年が0になり、再び0時点から5年経過しないと消滅時効が完成しません)

「時効の完成猶予」の具体例は、訴訟を提起されたり、強制執行(差押)されたりすること等になります。
そしてそれらの事由が当初の目的を達成して終了した時(取下や取消等で中途で手続きが終了せず、手続きが最後まで行われた)から、再び時効期間が開始されます(時効の更新)

具体例:訴訟手続きにおいて判決が出されその後(判決が)確定(訴訟の終了)、または確定判決と同一の効力を有するもの(例:和解、調停)により権利が確定した場合、そのときから新たに時効期間が開始されます(時効の更新)

自分が債務を承認(借入のあることを認めること)することは(残額の一部を弁済したりすることも承認となります)完成猶予ではなく即時に「時効の更新」となります。(民法152条)

{民法153条(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲は相対効である)の定めの特則として主債務に消滅時効の更新があった場合は保証債務も更新となるので注意してください。
「民法457条1項:主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」}
つまり、Bさんの主債務の消滅時効は完成しているし、Aさんは主債務の消滅時効の援用をできるので、援用して主債務を消滅することができ、その結果Aさんの保証債務も消滅するということになります。

上記の事例でBとAが親子であり、Bの死亡によりAがBを相続した場合どうなるのか?についてはQ&A9で説明しています。

また、主債務と保証債務の消滅時効について詳しく解説している債権回収サイトQ&A14「主債務と保証債務の消滅時効」も是非、ご覧下さい。

民法改正後の消滅時効

令和2年4月1日施行された改正民法により、消滅時効の規定も新しく変更されています。

しかし、令和2年4月1日より前に権利が生じた場合とその日以降に権利が生じた場合とでは、適用が異なります。

令和2年4月1日より前に権利が生じた場合(例:AさんがBさんに令和2年1月1日に50万円を貸した。)は旧法が適用されて改正後の新法は適用されません。
令和2年4月1日以降に権利が生じた場合は、(例:AさんがBさんに令和2年5月1日に50万円を貸した。)新法が適用されます。
(根拠:民法の一部を改正する法律附則10条 1項、4項)

よって、以下説明することは旧法の説明と新法の説明を並列的にしています。

説明書きの箇所に旧法の説明は(旧法)、改正後の新法の説明は(新法)と記載しています。

新法では、貸金業者であろうが個人であろうが、区別なく消滅時効の完成する期間は、「権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時より10年」となります。
(新民法166条第1項)

「権利を行使することができる」というのは、例えば金銭貸付で支払期日が経過したことにより、「貸金を返してください」と請求できることをいいます。

債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、5年経過によりほとんどの場合は消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

貸金業者から借入をし、最後に返済したとき又は最後に借入をしたとき(どちらか遅いときから)5年以上経過した場合は消滅時効が完成している(=借金の支払い義務がなくなる)可能性があります。

最後の返済又は最後の借入から5年以上経過していて、その間に「時効の完成猶予又は更新」(旧法では「時効の停止」、「中断」)となるような事実がない限り、 消滅時効が完成することになります。
(新民法147条)

「時効の完成猶予」とはある事由(事由とは、物事の理由・原因、又はその事実)が発生した場合に、一定期間時効が完成せず、猶予されることです(旧法では「時効の停止」といいました)

「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)とは、時効期間が進行中に、ある状態が生じた場合に時効期間がリセットされ、再びゼロからスタートすることになることです。
(例: 消滅時効期間が5年の場合、もう3年経過していて、あと2年で消滅時効が完成するようなときに、更新があると3年が0になり、再び0時点から5年経過しないと消滅時効が完成しません)

「時効の完成猶予」の具体例は、訴訟を提起されたり、強制執行(差押)されたりすること等になります。

そしてそれらの事由が当初の目的を達成して終了した時(取下や取消等で中途で手続きが終了せず、手続きが最後まで行われた)から、再び時効期間が開始されます(時効の更新)

具体例: 訴訟手続きにおいて判決が出されその後(判決が)確定(訴訟の終了)、または確定判決と同一の効力を有するもの(例:和解、調停)により権利が確定した場合、そのときから新たに時効期間が開始されます(時効の更新)

自分が債務を承認(借入のあることを認めること)することは(残額の一部を弁済したりすることも承認となります)完成猶予ではなく即時に「時効の更新」となります。
(民法152条)

消滅時効の正確な起算点は下記を参照ください。

原則、貸付け金の請求権の消滅時効の起算点は、支払期日(正確にはその翌日)となります。

リボルビング取引の場合には、「期限の利益喪失(貸付金を一括で返済しなければならなくなること)の日」を定めている場合が多く、その期日の翌日が消滅時効の起算点となります。

※リボルビング取引とは予め締結する基本契約(包括契約)において、貸付金利、貸付限度額、返済方式等の基本事項を定めておき、それに従って、借入と 返済を繰り返す貸付形態

もし、5年以上借入も返済もしていない場合で、貸金業者から、請求されたり、訴訟を提起されたりした場合は、お気軽に当事務所にご相談ください。

消滅時効が完成している場合は、消滅時効を援用 することにより、(簡単に言うと)借金が無くなるということになります。 {貸金業者が自ら有する債権(貸金を請求する権利)の権利を行使できなくなるということになります}

※個人間の貸借のように「商人や会社でない者が双方当事者となる貸借」の場合は民事債権となり、消滅時効期間は10年となります。(旧法 民法167条)

※ 信用金庫、信用組合、農協、漁協、商工中金、労働金庫等は会社や商人
 ではなく「非営利法人」ですので、原則消滅時効の期間は10年となります。
 但し、債務者が個人事業主や中小企業で借り入れ目的が「事業資金」等
 事業目的の場合は「商事債務」となりますので、商事債権の時効期間と
 なり、5年となります。
旧法での説明です。 新法では「商事債権の消滅時効(商事時効)」という考え方は廃止されました。
しかし新法においても債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、その場合ほとんどの債権は5年経過により消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

新法では個人以外の場合は、たいてい5年で時効が完成する場合が多いでしょう。
個人の場合は、個人債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年となります 

 例:個人間でお金を貸したけれど、返済期日を「借主の出世した日(課長に昇進した日)」と定めていて、貸主が借主の出世した日を知らない場合は、借主が出世した時から10年で消滅時効が完成しますが、10年経過する前に貸主が、借主の会社に電話して借主の出世(課長に昇進)を知った時は知った時から5年となります。
5年経過する前に借主が課長になってから10年経過していた場合は、その時点で消滅時効が完成となります。)

時効の援用とは
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張すること。
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅する。

    

           

           

           

           

   消滅時効詳細

消滅時効について、更に詳しく知りたい方は、当事務所債務整理専門サイトの「消滅時効 解説」をご覧下さい

           

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