[消滅時効Q&A11
消滅時効期間経過後の支払督促の確定]

 

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   消滅時効Q&A11 
消滅時効期間経過後の支払督促の確定

消滅時効に対してよくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。

      

Q11

Q4で「消滅時効期間経過後に判決が確定するともう消滅時効援用の主張ができなくなる可能性がある」と説明がありましたが、私の場合は訴訟が提起されたのではなく 消滅時効期間経過後に「仮執行宣言付き支払督促」の書面が届きました。
しかし、私は、その手続きに対して「異議申立」をせずにそのまま放置していました。
その後、その支払督促が 確定したとの通知を受領しました。
Q4の判決確定と同様に私も消滅時効の主張をすることはできないのでしょうか?

A11

 

支払督促とは、訴訟手続きを経ないで、裁判所の書記官が債務者に支払を命じる制度です。
仮執行宣言付支払督促は、判決と同様の強制力が与えられる処分手続きです。
支払督促も仮執行宣言付支払督促も、判決確定で生ずる「既判力」はありません。

※ 既判力とは、確定判決で示されたその目的とした事項に関する判断につき、当事者は別の裁判で別途争うことができなくなり、裁判所及び当事者も確定判決の判断内容に拘束されるという効力です。

訴訟が提起されて判決が確定した場合確定判決※によって確定した権利については、もともと10年より短い時効 期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年となります。(民法169条第1項)

※「判決が確定した」という状態とは判決が言渡されて上訴されないで一定の期間(上訴期間)が経過した場合、通常の不服申し立てによっては、その結果を覆すことができない状態のことです。

裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても同様です(同条同項)
仮執行宣言が付された支払督促で、督促異議の申立て期間内に異議の申立てがない場合又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は確定した判決と同一の効力を有する(民事訴訟法396条)ことになり、その場合も時効期間は10年となります。

消滅時効期間経過後に裁判が起こされて、その裁判上で訴訟上の請求を認めたり(債務の認諾)または、訴訟手続に対応せずに放置して判決が出されたりして(欠席裁判)判決が確定すると消滅時効の援用の主張をすることができなくなる可能性があります。
判決には既判力といって「確定判決で示されたその目的とした事項に関する判断につき、当事者は別の裁判で別途争うことができなくなり、裁判所及び当事者も確定判決の判断内容に拘束される」という効力があり、消滅時効完成前の判決確定(その場合は消滅時効の中断・更新となる)と異なり消滅時効の期間が経過しているので消滅時効の中断や更新という問題ではなくなり、判決確定後に判決の趣旨と異なる「消滅時効援用」という主張ができなくなると考えられています。

支払督促については、最近、注目すべき判例があります。

消滅時効期間経過後に、支払督促が確定しても消滅時効の中断・更新は生じないし、消滅時効の援用ができなくなることはありません。
(令和2年10月21日宮崎地裁判決)


支払督促の確定は判決の確定と同様の効果があると説明しましたが、それは、消滅時効期間経過前の時効の中断・更新の問題です。

消滅時効期間経過後に支払督促が確定しても支払督促にはもともと「既判力」がないので、消滅時効援用の主張が認められないということはありません。というのが、上記判決の趣旨です。

「支払督促」には既判力がないので、確定判決と同様の効力はないので、消滅時効援用が認めらるということはわかりました。
では、支払督促の手続で債務者(請求された人)が何ら支払督促に対して異議申し立てをせず、放置していた場合でも消滅時効援用は認められるのでしょうか?
そのことについて宮崎地裁判決では「債務者のそのような消極的対応は時効による債務消滅の主張と相容れないものとまではいえず、信義則に反するとはいえない」として時効の援用が認められるとの判断をしました。


上記判決は地方裁判所での下級審判決であり、今後、上級裁判所において上記内容と異なる判断が下される可能性はあります。

今後の司法判断を見守りながら、対応していかなければなりません。

民法改正後の消滅時効

令和2年4月1日施行された改正民法により、消滅時効の規定も新しく変更されています。

しかし、令和2年4月1日より前に権利が生じた場合とその日以降に権利が生じた場合とでは、適用が異なります。

令和2年4月1日より前に権利が生じた場合(例:AさんがBさんに令和2年1月1日に50万円を貸した。)は旧法が適用されて改正後の新法は適用されません。
令和2年4月1日以降に権利が生じた場合は、(例:AさんがBさんに令和2年5月1日に50万円を貸した。)新法が適用されます。
(根拠:民法の一部を改正する法律附則10条 1項、4項)

よって、以下説明することは旧法の説明と新法の説明を並列的にしています。

説明書きの箇所に旧法の説明は(旧法)、改正後の新法の説明は(新法)と記載しています。

新法では、貸金業者であろうが個人であろうが、区別なく消滅時効の完成する期間は、「権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時より10年」となります。
(新民法166条第1項)

「権利を行使することができる」というのは、例えば金銭貸付で支払期日が経過したことにより、「貸金を返してください」と請求できることをいいます。

債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、5年経過によりほとんどの場合は消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

貸金業者から借入をし、最後に返済したとき又は最後に借入をしたとき(どちらか遅いときから)5年以上経過した場合は消滅時効が完成している(=借金の支払い義務がなくなる)可能性があります。

最後の返済又は最後の借入から5年以上経過していて、その間に「時効の完成猶予又は更新」(旧法では「時効の停止」、「中断」)となるような事実がない限り、 消滅時効が完成することになります。
(新民法147条)

「時効の完成猶予」とはある事由(事由とは、物事の理由・原因、又はその事実)が発生した場合に、一定期間時効が完成せず、猶予されることです(旧法では「時効の停止」といいました)

「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)とは、時効期間が進行中に、ある状態が生じた場合に時効期間がリセットされ、再びゼロからスタートすることになることです。
(例: 消滅時効期間が5年の場合、もう3年経過していて、あと2年で消滅時効が完成するようなときに、更新があると3年が0になり、再び0時点から5年経過しないと消滅時効が完成しません)

「時効の完成猶予」の具体例は、訴訟を提起されたり、強制執行(差押)されたりすること等になります。

そしてそれらの事由が当初の目的を達成して終了した時(取下や取消等で中途で手続きが終了せず、手続きが最後まで行われた)から、再び時効期間が開始されます(時効の更新)

具体例: 訴訟手続きにおいて判決が出されその後(判決が)確定(訴訟の終了)、または確定判決と同一の効力を有するもの(例:和解、調停)により権利が確定した場合、そのときから新たに時効期間が開始されます(時効の更新)

自分が債務を承認(借入のあることを認めること)することは(残額の一部を弁済したりすることも承認となります)完成猶予ではなく即時に「時効の更新」となります。
(民法152条)

消滅時効の正確な起算点は下記を参照ください。

原則、貸付け金の請求権の消滅時効の起算点は、支払期日(正確にはその翌日)となります。

リボルビング取引の場合には、「期限の利益喪失(貸付金を一括で返済しなければならなくなること)の日」を定めている場合が多く、その期日の翌日が消滅時効の起算点となります。

※リボルビング取引とは予め締結する基本契約(包括契約)において、貸付金利、貸付限度額、返済方式等の基本事項を定めておき、それに従って、借入と 返済を繰り返す貸付形態

もし、5年以上借入も返済もしていない場合で、貸金業者から、請求されたり、訴訟を提起されたりした場合は、お気軽に当事務所にご相談ください。

消滅時効が完成している場合は、消滅時効を援用 することにより、(簡単に言うと)借金が無くなるということになります。 {貸金業者が自ら有する債権(貸金を請求する権利)の権利を行使できなくなるということになります}

※個人間の貸借のように「商人や会社でない者が双方当事者となる貸借」の場合は民事債権となり、消滅時効期間は10年となります。(旧法 民法167条)

※ 信用金庫、信用組合、農協、漁協、商工中金、労働金庫等は会社や商人
 ではなく「非営利法人」ですので、原則消滅時効の期間は10年となります。
 但し、債務者が個人事業主や中小企業で借り入れ目的が「事業資金」等
 事業目的の場合は「商事債務」となりますので、商事債権の時効期間と
 なり、5年となります。
旧法での説明です。 新法では「商事債権の消滅時効(商事時効)」という考え方は廃止されました。
しかし新法においても債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、その場合ほとんどの債権は5年経過により消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

新法では個人以外の場合は、たいてい5年で時効が完成する場合が多いでしょう。
個人の場合は、個人債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年となります 

 例:個人間でお金を貸したけれど、返済期日を「借主の出世した日(課長に昇進した日)」と定めていて、貸主が借主の出世した日を知らない場合は、借主が出世した時から10年で消滅時効が完成しますが、10年経過する前に貸主が、借主の会社に電話して借主の出世(課長に昇進)を知った時は知った時から5年となります。
5年経過する前に借主が課長になってから10年経過していた場合は、その時点で消滅時効が完成となります。)

時効の援用とは
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張すること。
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅する。

    

           

           

           

           

   消滅時効詳細

消滅時効について、更に詳しく知りたい方は、当事務所債務整理専門サイトの「消滅時効 解説」をご覧下さい

           

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