[消滅時効Q&A9
主債務者を相続した連帯保証人の消滅時効援用]

 

消滅時効Q&A>Q&A9

 消滅時効とは

消滅時効とは一定期間、権利が行使されないと権利が消滅する民法で定められている制度です

時効の援用とは
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張すること。
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅する。

  

   消滅時効Q&A9 
主債務者を相続した連帯保証人の消滅時効援用

消滅時効に対してよくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。

      

Q9
私(A)の父(B)は銀行から借入があり、私は連帯保証人です。
私の父が亡くなり、亡くなって2年後に父の債務の消滅時効が完成しました。
私は父の債務の消滅時効を主張できるのでしょうか?
また、私が父の死後、連帯保証人としての保証債務を弁済したのですが、この弁済は消滅時効の中断となるのでしょうか?

 

Aさんのお父さんが借りている債務をAさんが連帯保証している場合、Aさんの父Bは主債務者といい、父Bの債務は主債務といいます。

まず、Aさんの父Bさんは、銀行という商人から借りていますので、Bさんの債務は(銀行から見ると)商事債権となります。

Aさんも商人である銀行と保証契約を締結しているのでAさんの保証債務は商事債権です。

商事債権は消滅時効の期間が5年となります。
旧法の説明です。 令和2年4月1日(民法改正施行日)よりも前の時期に借入した債権については「商事債権の消滅時効」として5年間となっていました。同日以降は、法改正により「商事債権の消滅時効」という概念はなくなりました。 法改正後(令和2年4月1日)以降は「商事債権の消滅時効」という概念はなくなり一律民法166条の通りとなります
 (新法では、貸金業者であろうが個人であろうが、区別なく消滅時効の完成する期間は、「権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時より10年」となります。
権利を行使することができるというのは、例えば金銭貸付で支払期日が経過したことにより「貸金を返してください」と請求できることをいいます。
債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、5年経過によりほとんどの場合消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。)

新法では個人以外の場合は、たいてい5年で時効が完成する場合が多いでしょう。個人の場合は、個人債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年となります。  

例:個人間でお金を貸したけれど、返済期日を「借主の出世した日(課長に昇進した日)」と定めていて、貸主が借主の出世した日を知らない場合は、借主が出世した時から10年で消滅時効が完成しますが、10年経過する前に貸主が、借主の会社に電話して借主の出世(課長に昇進)を知った時は知った時から5年となります。)

次に相続人(Aさん)が被相続人(Aさんの父)の消滅時効の期間を引き継げるのか(承継と言います)という問題です。

Aさんは引き継ぐことができます。

消滅時効の期間を5年間だとするとAさんの父は消滅時効の期間が開始されて3年後に亡くなったということになりますからその時点では、消滅時効は完成されていません。

しかしAさんが(父の)消滅時効の期間を引き継いで父が亡くなってから2年間で消滅時効が完成します。

(Aさんが相続放棄をした場合は主債務を承継しないので、消滅時効の問題は起こりません。
相続放棄をしてもAさんの保証債務はそのまま残ります。詳しくは「相続Q&A14」をご覧下さい。)

Aさんは父の権利・義務を相続することで父の「主債務者」とういう立場を承継します。

ここでややこしいのはAさんは父の生前、父の連帯保証人であったことです。

Aさんは主債務者と連帯保証人という2つの立場を有することになります。

そしてAさんが主債務の(消滅時効期間が経過後)消滅時効を援用した場合は、主債務が時効消滅し、Aさんの連帯保証債務も消滅します。
(主債務が消滅した場合は付従性により保証債務も消滅します※1)

※1
保証債務の付従性とは、主たる債務が成立しないと保証債務も成立しないし、消滅すれば保証債務も消滅するということ

ここまでは問題ないのですが、(主債務者兼保証人である)Aさんが保証債務の弁済を行った場合、保証債務は消滅時効の更新となりますが、主債務について時効の更新となるかどうかです。

「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)とは、時効期間が進行中に、ある状態が生じた場合に時効期間がリセットされ、再びゼロからスタートすることになることです。
(例、消滅時効期間が3年になっていて、あと2年で消滅時効が完成するようなときに、更新があると3年が0になり、再び0時点から5年経過しないと消滅時効が完成しません)

{主債務者と保証人が別人の場合は、保証債務の時効の更新は主債務の時効の更新とならないので(民法153条) 保証人は保証債務を弁済(時効の更新)しても主債務の消滅時効の完成(時効の援用)を主張できます。
Q&A8 をご覧下さい。}

主債務の時効の更新とならない場合は(このケースでは、主債務には他の更新の事実はないものとします)主債務は消滅時効が完成していますので、Aさんは主債務の消滅時効を援用して主債務の消滅を主張できるわけです。

この問題は、裁判で争われた事案で、最高裁が平成25年9月13日判決で判断を下しました。

判決は「保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合、当該弁済は特段の事情のない限り、主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である」としました。

よって、Aさんは例え保証債務の弁済をしたとしても(主債務を相続したことを知りながら弁済した場合は)主債務者として主債務の消滅時効の更新に該当し、(弁済日から時効更新の事由がないまま5年経過しないと)主債務の消滅時効の完成を主張することはできません。

民法改正後の消滅時効

令和2年4月1日施行された改正民法により、消滅時効の規定も新しく変更されています。

しかし、令和2年4月1日より前に権利が生じた場合とその日以降に権利が生じた場合とでは、適用が異なります。

令和2年4月1日より前に権利が生じた場合(例:AさんがBさんに令和2年1月1日に50万円を貸した。)は旧法が適用されて改正後の新法は適用されません。
令和2年4月1日以降に権利が生じた場合は、(例:AさんがBさんに令和2年5月1日に50万円を貸した。)新法が適用されます。
(根拠:民法の一部を改正する法律附則10条 1項、4項)

よって、以下説明することは旧法の説明と新法の説明を並列的にしています。

説明書きの箇所に旧法の説明は(旧法)、改正後の新法の説明は(新法)と記載しています。

新法では、貸金業者であろうが個人であろうが、区別なく消滅時効の完成する期間は、「権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時より10年」となります。
(新民法166条第1項)

「権利を行使することができる」というのは、例えば金銭貸付で支払期日が経過したことにより、「貸金を返してください」と請求できることをいいます。

債権者が貸金業者や銀行のような会社組織であれば、権利を行使できる時を知らないはずがありませんので、5年経過によりほとんどの場合は消滅時効が完成すると考えて良いでしょう。

貸金業者から借入をし、最後に返済したとき又は最後に借入をしたとき(どちらか遅いときから)5年以上経過した場合は消滅時効が完成している(=借金の支払い義務がなくなる)可能性があります。

最後の返済又は最後の借入から5年以上経過していて、その間に「時効の完成猶予又は更新」(旧法では「時効の停止」、「中断」)となるような事実がない限り、 消滅時効が完成することになります。
(新民法147条)

「時効の完成猶予」とはある事由(事由とは物事の理由・原因、又はその事実)が発生した場合に、一定期間時効が完成せず、猶予されることです(旧法では「時効の停止」といいました)

「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)とは、時効期間が進行中に、ある状態が生じた場合に時効期間がリセットされ、再びゼロからスタートすることになることです。(例: 消滅時効期間が5年の場合、もう3年経過していて、あと2年で消滅時効が完成するようなときに、更新があると3年が0になり、再び0時点から5年経過しないと消滅時効が完成しません)

「時効の完成猶予」の具体例は、訴訟を提起されたり、強制執行(差押)されたりすること等になります。
そしてそれらの事由が当初の目的を達成して終了した時(取下や取消等で中途で手続きが終了せず、手続きが最後まで行われた)から、再び時効期間が開始されます(時効の更新)

具体例:訴訟手続きにおいて判決が出されその後(判決が)確定(訴訟の終了)、または確定判決と同一の効力を有するもの(例:和解、調停)により権利が確定した場合、そのときから新たに時効期間が開始されます(時効の更新)

自分が債務を承認(借入のあることを認めること)することは(残額の一部を弁済したりすることも承認となります)完成猶予ではなく即時に「時効の更新」となります。
(民法152条)

消滅時効の正確な起算点は下記を参照ください。

原則、貸付け金の請求権の消滅時効の起算点は、支払期日(正確にはその翌日)となります。

リボルビング取引の場合には、「期限の利益喪失(貸付金を一括で返済しなければならなくなること)の日」を定めている場合が多く、その期日の翌日が消滅時効の起算点となります。

※リボルビング取引とは予め締結する基本契約(包括契約)において、貸付金利、貸付限度額、返済方式等の基本事項を定めておき、それに従って、借入と 返済を繰り返す貸付形態

もし、5年以上借入も返済もしていない場合で、貸金業者から、請求されたり、訴訟を提起されたりした場合は、お気軽に当事務所にご相談ください。

消滅時効が完成している場合は、消滅時効を援用 することにより、(簡単に言うと)借金が無くなるということになります。 {貸金業者が自ら有する債権(貸金を請求する権利)の権利を行使できなくなるということになります}

 

   消滅時効詳細

消滅時効について、更に詳しく知りたい方は、当事務所債務整理専門サイトの「消滅時効 解説」をご覧下さい

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