相続手続きと遺言(平成29年8月22日講演)  
相続手続き全般と遺言の作成方法、遺言をした方が良い場合
 

平成29年四万十市役所(四万十市包括支援センター主催)で行った講演で、相続・遺言で気を付けないといけないところ知っているとメリットがある点や、何で相続登記をしないといけないか、相続関係の法令・判例についてについてわかりやすくお話ししました。

本公演についての内容と内容についてより理解の深まる別添の資料を表示いたします。


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 相続登記をしないといけない理由

           

空き家問題

           

まず、レジュメ記載の1番の相続登記をしないといけない理由と題してご説明します。
その前に私の経験談から入っていこうと思います、私、司法書士を開業する前に不動産金融の仕事をしてまして、不動産を資産査定したり、換価したりしていました。
不動産物件をよく現地に見に行くんですけど、今、東京は、空き家が多くて、すごいんです。
廃墟のような空き家やガラスが壊れて焼け焦げたようなマンションが住宅街やオフィス街に突如現れるんです。近代的なビル群が並ぶ都心で突然、廃墟ビルがあると異様な光景です。
空き家の壁が隣の家に倒れかかっているやつとか、崩壊しそうなビルとかですね。

最近よく目立つようになってきてまして、隣近所の方が、異臭や防犯上の問題、倒壊の危険性があって、区役所になんとかしてくれというんですが、なかなか、改善はすすんでいないんです。いろんな原因があるんですが、一番多い原因は、「所有者が不明」なんで、「この空き家なんとかしてくれ」といっても、役所も他人の財産を勝手になんとかできない、というところがあって手が出せない。
自治体によっては、条例を作って(所有者を調査して)危険な空き家を強制的に解体できるところも増えてきてるのですが、全国的にはなかなかすすんでいない。

なぜ、こんな話をするかというと、相続登記と関係あるのです。
通常、空き家の所有者を確かめるには登記簿を見て、所有者を確認するのですが、所有者が既に死亡していて、相続登記がされていない。相続人が全国にちらばっている。
そうすると法律上、法定相続人全員が相続人となります。
自治体も相続人が全国に散らばって多数存在する法定相続人全員を探し出して空き家対策の話をするのですが、これだけでも大変な手間です。

相続登記がされていて現在の所有者につながっていれば、手間はだいぶ少なくなります。
(やっと相続人を確認できても連絡が取れない、住民票の住所に住んでいない。
連絡がつかない。
所有者がいないことが判明するとその不動産は国のものになるのですが、所有者は戸籍簿上生存している、しかし連絡がとれない。
こうなってくると、いろんな問題がある空き家を何とかしようにも法的な障害があって解決できない。ということになってきます。)

また別の話ですが、これも相続登記をした方がいいよという話です。
これも東京での話ですが、区役所に友人がいまして、空き地があって開発のために買い取りたい。しかし所有者がわからない。空き地が有効活用されていないので所有者も、その土地が自分のものであるかもわからないかもしれない。

 また、金融の仕事をしていた時に不動産開発の担当者からよく聞いた話、都心の一等地もしくは準ずる土地に空き地がある。買い取りたい、しかし所有者がわからない。
空き地が一向に有効活用されていないので、所有者本人も価値を知らないのだろう。
登記簿上の名義人がかなり古い時代に登記されたままであれば、現在の所有者を探し出すのは至難の業です。

やっと所有者が判明しても当の所有者が行方不明、とか連絡をとれない、とかよくあります。
昭和初期とか大正時代のものとかになると戸籍をたどっていっても判明しない場合も多いのです。
やっと相続人がわかっても住民票上の住所にいなくて連絡が取れない行方がわからない。よくあることです。

運良く、現在の所有者に会うことができた場合もあります。
その所有者自体が都心の一等地に自分の所有地があったことを知らなかったんです。信じられない話のようですが・・・

けっこう、世の中には莫大な遺産の相続人であるという事実を知らない人がいます。
相続登記をしてなくて、所在不明でその不動産の有効利用が図れず、資産を持ちながらそのもっていることを知らないという、社会的にも経済的にも損失もったいない話です。
本来開発により、人口集中し、経済効果が波及し、地域も活性化する。(開発側のWIN)
有効利用されていない土地の所有者も利益がでる(所有者側のWIN)本来WINWINの関係がLOSELOSEの関係になっている。もったいないことです。

ここでも強調するのはこのようになるのは相続登記がされていないことが一つの大きな要因なのです。

           

相続登記の相談事例

           

そしてこの前にもある相続登記の相談がありました。
不動産物件の所有者がお亡くなりになってその物件を相続した人が相談に来たのですが、 その人はお父さんが遺産分割協議でその物件を相続した人ですが、遺産分割協議書も作っていなくて亡くなりました。

登記簿を見てみると、その物件の所有者は、そのお父さんの前の前の代、相続人からすると、ひいおじいさんの名義になっていました。
相続登記をするときには、相続登記をしようとする人が確かに相続人なのかを証明するために登記上の名義人から相続人に至るまでの戸籍を法務局に提出しなければなりません。

ひいお爺さんまでの戸籍をたどるとなると大変な作業となります。
例えば、ひいおじいさんも池袋で生まれて、死ぬまで池袋にいて子供さんやお孫さんも池袋で出生から死亡まで籍があれば、ともかく、通常、こどもさんは、長男が大阪に転籍したり、長女は仙台に転籍、次男は札幌に転籍とかよくあります。
まして、孫になるとさらに広がっていく可能性があります。なおかつ、昔は明治、大正、昭和初期にいたるまで、10人兄弟、8人兄弟、普通でした。

そして、お子さんやお孫さんの中に亡くなってたりする人もいますので、その場合は亡くなった方のお子さんや配偶者の方が相続人となりますので、更に相続人が増えていくことになります。
そして、結婚や離婚、その他の事情で何度も転籍(本籍を変更するということです)を繰り返す方もいますので、その場合、転籍先の市役所区役所からすべて戸籍を取得していかなければなりません。
私の経験で10回ほど、転籍した方がいまして、その方は全国いろんなところで転籍されていまして郵送で金沢の役所に戸籍取得依頼しまして、送付して返ってくるまで、2,3日かかります。れから鹿児島に郵送して3,4日かかる、それを繰り返すと、その人ひとりの戸籍をすべて取り終えるまで数か月かかったこともありました。

相続人が何十人もいるとほんとに大変です。
そうなると莫大な戸籍の量を取得していかなければなりません。
登記名義がおじいさん名義で孫が相続する登記ってよくあるのですが、 戸籍の取得だけで、数週間、戸籍通数は何十通以上、費用だけで、ここで費用というのは市役所に支払う戸籍手数料だけで数万円かかったりします。
それ以外にも郵送料金や、窓口まで言った場合には、交通費、司法書士に頼んだ場合は司法書士の取得手数料がかかりますので、結構な金額となります。

また、除籍された戸籍や改正原戸籍といって、法令改正により変更された旧様式の戸籍ですが、これら保存期間は150年ですが、2010年以前は80年です。1961年以前は50年ですので、古い戸籍は廃棄されている可能性が高いです。
こうなると戸籍をたどっていくのが大変な作業になります。
全て戸籍をとりおえてこれで終わりかというとそうでありません。

相続人全員に連絡をとって、遺産分割協議書に同意していただかないといけないのですが、相続人のなかには、行方不明、所在不明の方がいたり、(住民票上の住所に在住していない)行方は判明しているのだけど、連絡が取れない、または話し合いに応じてくれない方がいます。
所在不明の場合は、裁判所に「不在者の財産管理人選任」の申し立てをしてその管理人をその行方不明の方の代理人としてその後の手続きを行うのですが、費用も時間もかかります。(3か月から6か月)
所在は判明してるが、連絡取れない、何とか手段を講じて連絡をとるしかない。しかし、連絡が取れても話し合いのテーブルについてくれない。これもよくあります。

話し合うことすらしてくれない場合は、対策として一つの手段としては裁判所に遺産分割調停(裁判所で調停委員が間に入って話し合いをすること)の申し立てをします。調停にも欠席するならば、その後の審判の申立をする。という流れになります。これも費用と時間がかかります。
また、連絡はとれたんだけども、相手方がお年を召されて認知症になっている場合もあります。その場合には正常なご判断ができないので、これも裁判所に「後見人選任」の申し立てをして後見人が相続人の代理人として(遺産分割の)協議をおこなうことになります。
選任審判まで2,3か月かかります。費用と時間かかります。

以上上げたのは、相続登記が放置されていて問題になる場合の中の2,3例なんですが、最近、よくあるんです、私の経験で、・・・・連絡が取れない、行方不明だ、認知症だ・・・というのが 今後の趨勢として高齢者の方が増加する高齢化社会のなかで、2025年には65歳以上の方の5人に1人は認知症になるといわれてます

相談者の方は、本来その不動産を取得できる権利があるのに、過去に相続登記がされてあいないことにより、権利を主張できなくなります。
一番良いのはそのときに相続登記をやっておけば、今よりも費用時間もかからずすんなり登記できていた。簡単に権利は保護されていたわけです。
最低限、遺産分割協議の書面は作っておくべきです。
話し合いで、合意を拒絶する人に対しては、その書面を見せるだけで、水戸黄門の印籠のように「ハハー」とおそれいる・・・かどうかは別として、証拠になりますので、(作っておくだけで)だいぶ違います。

           

相続登記をぜひ、していただきたい司法書士からのお願い

           

相続登記が放置されていてそのまま時間が経過すると、未来の子孫の方が登記しようとするととんでもない時間、費用かかるんです。
もしくは登記することができないかもしれない(相続人不明で)
また、社会経済的にも損失であるわけで、未来の子孫が権利を主張するのに難儀しないように相続登記をしておくことです。
それによって、権利は保護され、子孫にも利益が残せるわけです。

だから、司法書士の立場からもお願いなのですが、未来のご子孫のためにも相続が開始されたら、放置せずにできる限り速やかに相続登記をされることをお願いする所存です。

           

 

相続に関して法律上の定め 

           

           

法定相続順位 法定相続人

           

レジュメの2番ですね。相続に関しての法律上の定め (1) の法定相続順位について説明します。
別添資料の2の図をご覧になってください。

その図でAさんとBさんは夫婦、お子さんがCさん、Dさん、Dさんの妻がEさん、そのこどもがFさん、GさんAさんのご両親がHさんIさん祖父母がJKLMさんご兄弟がNさんその子が(甥または姪が)O(孫P)さんとご理解ください。

Aさんがおなくなりになると民法で定められている法定相続人はどうなるか、まず、順位に関係なく常に相続人となるのは配偶者です。その図でいうとAさんの配偶者のBさんとなります。
第1順位は、子ですね、図でいうと、C、Dです。もし、DがAさんより以前になくなっている場合はDさんの子のF、GさんがAさんの相続人となります。

もし、Aさんに子がいない場合は、第2順位となるのですが法律用語でいうと直系尊属といいまして、(直系尊属と直系卑属の説明)その図では、Aさんの父母のHIが相続人となります。
Aさんのご両親がお亡くなりになっていて、Aさんの祖父母がご健在でしたら、祖父母がAさんの相続人となります。図でいうとJKLMさんですね、直系尊属がいらっしゃらない場合は第3順位となりましてAさんの兄弟姉妹図ではNさんが相続人となります。
もしNさんがAさんの亡くなる前に亡くなっていたらOさんが相続人となります。法律上Aさんが亡くなる前に相続人が既に亡くなっていることを「代襲」といいます。
もし、すでにOさんもなくなっていて、Oさんに子があってもOさんの子は相続しません。(兄弟姉妹では再代襲はしません)混同しないようにいうと、Aさんが亡くなって、順次、Nさん、OさんPさんが亡くなった場合、代襲でないので、Pさんは相続人となります。

(2) の法定相続分の説明をします。
民法で定められている法定相続分は別紙3記載のとおり、配偶者と子の場合、 別紙2のBさんとCさん、Dさんの場合ですね、配偶者が1/2子が1/2ですので、 別添資料の2の図をご覧になってください。

具体的にいうと、Cさん、Dさんあわせて1/2ですので、Cさん、Dさんの相続分は、1/4づつとなります。

CさんもDさんももともといない場合、夫婦間に子がいなかった場合ですね、配偶者が2/3、直系尊属であるHさん、Iさんが1/3となります。
もしHさん、Iさんがご健在ならHさんIさんはそれぞれ1/3の半分の1/6づつとなります。

直系尊属ももうすでにいない場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
図では、Bさんが3/4Oさんが1/4となります。

           

遺産分割協議

           

(3) の遺産分割協議のお話をします。
民法で定められている法定相続分についてお話しました。
しかし、必ずこのとおりにしないといけないわけではありません。
遺言やら協議やらでなにも取り決めがない場合はこうなりますよ。ということなんです。

遺言でも法定相続と異なる割合を決めることはできます。遺言に関しては、後程お話しします。
相続人全員が話し合いで相続分を決めることができます。
遺産分割協議といいます。

遺産分割協議が有効に成立するためには参加者全員が意思能力があることが必要です。
意思能力とは自分の行為の結果を判断できる能力のことです。
認知症の場合は、意思能力がない状態と判断される場合が多いので、その場合は、さきほどもお話しましたが、裁判所に後見人申し立てをしないといけません。
相続財産、遺産ですね遺産全部の割合を同じ割合で決めることもできますし、個別の財産について、個別の割合を定めることもできます。

例えば、相続人がAさん、Bさんだとして不動産やら現金やらをAさん、Bさんと で1/2づつと決めてもいいし、不動産はAさんのもの、自動車はBさんのもの、 現金はAさん1/3、Bさん2/3と決めてもいいわけです。

遺産分割協議が相続人間で合意して円満に話がつけばいいのですが、話し合いがまとまらない場合、結構多いんですが、解決のための法的な手段としては、遺産分割の調停という手段があります。
調停とは、裁判所の調停員が妥協点を見出し、双方合意に導くことです。調停でも双方合意に至らない場合は、審判という手続き内で裁判官が割合について言い渡すことになります。

           

相続財産となる財産 ならない財産

           

別添資料の5 にある「相続財産と遺産分割協議の対象となる財産」の相違について説明したいんですがそれを説明する前に 別添資料の2の図をご覧になってください。

別添資料4の「相続財産となる財産、ならない財産」を説明します。亡くなった人の財産はすべて相続財産になるのかというとそうではありません。
相続財産にならない典型的なものは祭祀財産といって墓とか仏壇ですね。
これは遺産ではなく祭祀を受け継ぐ人が受け継ぎます。民法では、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者となっています

よく勘違いされることが多いのが「生命保険金です」これは、保険者が亡くなって初めてもらえるものですが、保険で定められた「受取人」の財産であって相続財産ではありません。
またまぎらわしいのですが、いまの説明は、法律上そうなるのですが、税法上は相続財産に含まれますので、受け取った人は相続税を支払う必要があります。
相続財産と遺産分割協議の対象となる財産の話に戻ります。

これってイコールでしょってと思われる方もいらっしゃると思いますが、実は、相続財産であるけれども、遺産分割協議の対象とならない財産があるんです。
別添資料の2の図をご覧になってください。

可分債権といいまして、可分とは資料に記載のある通り分けることが可能と書いてます。

債権とは例えば、人にお金を貸している場合に返してくださいと請求できる権利のことです。
お金を貸した場合は、100万円貸した場合は50万と50万とわけることができますから、可分債権となります。
たとえば、亡くなった人がZさんにお金を100万円貸していた。これについては、相続人がAさん、Bさんの場合、Aさんが50万Bさんが50万の債権を相続することになります。
銀行に会請けている預貯金も可分債権です。預金を引き出す行為は貸した金銭を返してもらうという行為です。

昔の最高裁判例で「銀行に預けている預貯金は可分債権だから遺産分割協議の対象にならず、当然、法定相続通りの割合になる」というのがありまして、 遺産分割協議で預貯金を財産の対象にできませんでした。
平成28年12月19日昨年ですが、最高裁が決定を出しまして、預貯金については、遺産分割協議の対象になると過去の最高裁判例を実質変更することになりました。

           

 

遺言 

           

(4) の遺言の話をします。ゆいごんは法律用語でいごんというのですが、私も司法書士になって20年ほどいごんといってますので、癖になってましていごんといいましたら、ゆいごんのことだなとご理解ください。

 自分が死んだ後に自分の築いた財産といいますか自己名義の財産を自分の死後どのように処置するかをいいのこすもしくは書き残すことを遺言といいます。

法定相続割合どおりに相続させたい場合は、遺言をしなくても、自動的にそうなりますから、する必要性はないわけですね。
例えば、お子さんが3人いて、A、B,Cさんがいて、Aさんは、無職で生活力がない、もしくは、自分の面倒をよくみてくれた、Bさんは会社の社長で問題ない、Cさんとは疎遠だ。だから、Aさんに全財産を像属させたい、こういう場合に遺言をする必要があります。
ここで、遺言を書く人でなくて、遺言で書かれている人、財産を受ける人の立場から考えましょう。本来、法定相続分があるはずなのに、ぜんぜんもらえないB,Cさんはがまんするしかないのでしょうか?そんなことはありません。
法律で「遺留分」という制度がありまして、最低限の取り分を主張することはできます。
遺留分については後程説明します。

別紙の14にこういう場合に遺言をしておいた方がいいという事例を並べています。

(別紙14を読む)ご興味のある方はお時間のある時にお読みください。
内縁の妻や配偶者の連れ子、息子の配偶者等、法定相続人になっていない人に財産を遺したいという場合に遺言をすることが必要です。

遺言をすることによって、自分の財産を承継してほしい人に遺すことができるわけです。
しかし100%遺言を書いた人の希望通りにいけるかというと必ずしもそうではありません。
後程ご説明しますが、法律には遺留分という規定があって、法定相続人は最低限の法律で保障された取り分があります。

また、遺言を書いた人がお亡くなりになった後で、相続人全員の同意であれば、遺言の内容と異なる相続割碧を決めることも原則有効と考えられています。
どんな場合でも遺言よりも相続人全員が合意すれば、その通りになるのかというとそうではありません。
どんな場合がセーフでどんな場合がアウトかというと相続Q&A5で詳しく解説してありますので、ご興味のある方はお読みください。

           

 

遺留分 

           

レジュメ5番の遺留分についてお話をします。

遺言のところでも少しお話をしましたが、遺言で、Aさんだけに全財産を遺すと書いてあった場合、BさんCさんは不満があるでしょう。
民法では、相続人に法律上最低限の割合を(いってみれば)保証しています。本来の法定相続分について、配偶者、子はその1/2、父母は1/3の遺留分の割合をもっています。 遺留分を持っているのは、全ての相続人ではありません。

別添資料6をみてください。

兄弟姉妹以外の相続人は 図に書いてある権利の割合をもっています。
別添資料2の配偶者Bであったり、子であるC,D、直系尊属のH,Iなんかは遺留分はありますが、兄弟のNは遺留分がありません。
そして遺留分を侵されている場合は、自分の遺留分を侵害した人に対して財産を一定分戻すように請求できます。「遺留分減殺請求」といいます。

別添資料7の図を見てください。

Aさんに配偶者Bがいて、子がC,D,Eがいます。
この場合、Aさんは遺言で「全財産をCに相続させる」とした場合、不満があるB、D、Eはそれぞれ遺留分減殺請求をすることができます。
Bは法定相続分がもともと1/2あったところ、遺言にかかれた相続分はゼロなので、1/2の1/2の1/4の遺留分をもちます。D,Eも法定相続分では1/6づつをもっているので、その半分の1/12づつの権利があります。

           

 

利益相反

           

6の利益相反についてお話します

利益相反とは、ある行為が一方には利益となり、もう一方には不利益となる行為のことです。
遺産分割協議で相続人の方で、未成年の方がいますと法定代理人である親が代理人になるんですけど、親も相続人であった場合、同じ協議のテーブルにつく相続人である未成年の代理人となるわけです。
別紙9をごらんください。

Aさんが亡くなった。
Eさんは未成年なんで、Bさんが代理人になるのですが、Bさんも遺産分割協議の参加者なんです。
そうすると、Bさんは、Eさんの取り分を削って、自分にとって都合の良いようにしないとも限らない。
よって、この場合は、家庭裁判所に「特別代理人」という代理人選任の申し立てをしなければならず、特別代理人を選任しないでなされた遺産分割協議は法律上有効となりません。

この場合に未成年が複数いれば、未成年どうしにも利益相反はあるので、それぞれ個別に特別代理人をたてなければならないので注意ください。
また、利益相反ではないのですが、Cさんが認知症で、判断能力ない場合は、Cさんの後見人の選任を家庭裁判所に申し立てて、そこで選任された後見人がCさんの代わりに遺産分割協議に参加しないと法的に有効となりません。

           

 

相続放棄

           

           

相続放棄とは

           

レジュメ7の相続放棄です。

相続放棄とは相続人が被相続人から受け継ぐべき遺産のすべてを放棄すること です。
相続で受け継ぐ財産には、プラスの財産もあれば、借金のようにマイナスの財産も受け継ぎます。
「マイナスの財産はいらん、プラスの財産だけでいい」としたいところですが、そのようにできる法律上の規定はありません。

しかし、相続する者が借金だけとか、マイナスの財産、債務がプラスの財産よりも大きい場合は、相続放棄することに大きなメリットがあります。
相続放棄の効果としては、「最初から相続人でなかった」ということになります。

最初から相続人でなかったわけですから、相続放棄した人の相続人である子が被相続人から見れば孫になります。
孫がおじいさんの相続人となるということはありませんし、また、相続したいとしても相続できません。

           

相続放棄の方法

           

自己のために相続開始(具体的にいうと被相続人がお亡くなりになったときですが、)があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の申述という手続きをとります。
相続開始されて3か月以上経過したとしても被相続人が借金があることを知ってから3か月以内でもセーフです。

私は、債権回収会社にいたときに、金融関係の仕事をしている人とつながりができるのですが、そのときには、いわゆる街金とよばれる中小貸金業者やノンバンクでは、債務者がお亡くなりになって、3ケ月経過して初めて相続人に請求するんだという話を聞きました。
昔は、こういうやり方で相続放棄できなくなってから請求するという悪質なやりかたをする貸金業者がいました。
昭和59年に最高裁の判決が出まして、「相当の理由がある場合には一律、相続開始を知って3か月経過していても放棄できますよ」ということになり、悪質な貸金業者のやり方は通用しないよということになりました。

判決については、概要を別添資料10に載せています。後程お読みください。

           

突然借金を背負う場合も

           

相続放棄で注意することですが、 相続放棄は各自がそれぞれ個人の権利を放棄することですので、相続放棄しない相続人が相続することはもちろんですが、相続放棄することにより本来相続人でない人が相続人となり、借金をかぶることになる。
ということがあります。

別添資料2を見てください。
その図で説明しますと、Aさんが亡くなった。
Aさんには借金があったので、子であるCさん、Dさんが相続放棄をしました。

そうするとAさんのご両親がなにもしないと借金をかぶることになります。Hさん、Iさんが放棄して、J、K、L、Mさんも放棄したとした場合は、Nさんに相続権がまわってきます。
Nさんは、C,D,H,I,J,K,L,Mが相続放棄をしたことを知ったら、相続放棄をしないと借金を背負うことになってしまいます。

Bさんは相続放棄しない限り、常に相続人となります。

           

 

相続税

           

           

相続税の対象となる財産

           

相続税の話をします。

余談ですが、私、はじめて司法書士になったときに、司法書士事務所に勤務しまして、そこの先生が、まず初めにこれを覚えろと渡されたのが、「税金関係」の冊子だったんです。
「司法書士は税金は専門外だが、業務のなかで、一番よく聞かれるのは税金だ。
私は司法書士なんで税理士に聞いてくださいといってもいいんだが、そういうこというと客が逃げていく。しっかりと勉強しろ」といわれました。

不動産に関する税や相続に関する税を勉強しましたが、民間企業にいたときも、社内でよく税金関係を聞かれました。
相続税について、別紙4で、相続の対象とならないが、相続税の対象となる財産について、表で分類しています。
相続税の計算をする際にまず亡くなった方の財産を正確に数値化しなければなりませんが、どこからどこまでが相続財産か?というときに役立ちます。
けっこう、そのへんのボーダーがはっきりしないことが多いので、・・・

           

相続税の基礎控除

           

相続税では1点だけ説明します。

相続税には基礎控除といって、一定額以下の財産を相続した人は支払い義務がありません。
基礎控除は3000万円及び相続人の数×600万円の合計額です。

別紙11をご覧になってください。

Aさんがなくなって、相続人がB,C,D,Eの4人です。
そうすると基礎控除は5400万円です。

Aさんの財産が5400万円を超えると相続税の申告が必要です。
相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告しなければなりません。
遅延すると延滞税が加算されます。

           

相続税と遺産分割協議

           

遺産分割を一度したけれども、事情があり、やり直しすることができるだろうか?みなさん、どうおもわれます?
法的には、相続人全員及び遺産分割虚偽によって利益を受けた第3者がいれば、その者の合意があればやり直しは可能です。

詳しくは相続Q&A12で詳しく解説しています。ご覧ください。

その際にご注意いただく点があります。
例えば、不動産を1回目の分割協議でAさんのものにしたけれども、2回目の分割でBさんのものにした場合、被相続人からAさんに所有権が移転して、再度Bさんに移転されていますから、相続税+贈与税と余分に支払わなければなりません。
よく相談される事例として、遺産分割で、不動産を子が取得したんだが、配偶者である母親に取得させたら、配偶者控除で大幅に税が安くなることがわかった。
だからやり直ししたい、というご相談なんですが、登記してしまうと今ご説明した通りになりますのでご注意ください。

税の支払いで注意するべき事項  事例説明

  1回目の遺産分割協議 不動産甲をAの所有にする。
  2回目の遺産分割協議(やり直し) 不動産甲をBの所有にする。
  登記上の変更  ①被相続人→Aに相続登記 ②A→Bに移転登記
 税の支払い義務 ①相続税の支払い  ②贈与税の支払い

 よくある相談

  遺産分割協議で不動産甲を子が取得   配偶者控除で相続税が低くなる。ことを聞いた。
だから配偶者に不動産を取得させるようやり直ししたい

  ※ 配偶者控除

配偶者が遺産分割等により取得した遺産の価額が次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

①  1億6千万円
②  配偶者の法定相続分相当額

事例 遺産総額が10億円であった場合別紙11の配偶者Bの法定相続分は    1/2なので5億円 ①を超えているが、②の範囲なので(B)について相 続税はかからない 

登記を経由している場合、やり直した方が本当に得なのかよく検討する ことが必要です。

           

 

遺言の種類と作成方法

           

遺言には法的にいって種類がわかれます。

別紙12に記載のとおり「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」等があります。

作成方法やメリットデメリットについては別紙12に整理してありますので、ご覧になってください。
自筆証書遺言を具体的に作成するにあたっての細かい作成方法は別紙15をご覧ください

遺言執行者

遺言の内容によっては、遺言執行者という遺言の内容を実行する専任者が必要となります。
別紙13の※4のところにその内容を記載しています。

遺言では何でもかんでも書いていいかというとそうではありませんで、法律で認められている事項について法的拘束力が発生することになります。

別紙13に遺言でできること遺言でしかできないこと生前の行為でもできることできないことを表にしてあります。

参考にしてください

最後に推定相続人から虐待や暴力をうけたことがあり、その者には、財産を相続させたくない場合に生前に家庭裁判所に「推定相続人の廃除」の申し立てをすることができ、遺言でもその旨を書き残すことができます。
遺言に記載された場合は、死後に遺言執行者が 裁判所に「廃除の申立手続き」を行います。

           

 

最近の重要な判例

           

最後に、相続関係で最近出ている最高裁判決で法令や過去の判例を変更した重要な判例をご紹介します。

Q&A形式でわかりやすく解説しています。

これは昔、民法では、非嫡出子といって婚外子については、婚姻関係に生まれた子の相続分の1/2しかなかったのですが、それは、憲法に違反しているだろうということで法律の規定に逆らう決定が出ました。婚外子は1/2ではなく、婚姻関係の間に生まれたこと同等の相続分を認められました。

その後、民法もこの決定に合わせて変更されました。
(平成25年12月11日公布施行)

詳しくは、相続Q&A11でわかりやすく解説しています。ご覧ください。

           

           

相続手続・遺産分割手続についてご不明の事項があれば、当事務所問い合わせまでご相談下さい。

           

相続とは

相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の財産や権利・義務について承継することです。

財産等を承継する人(相続人といいます)は、民法で定められています。

被相続人の一身に専属したものは相続財産に含まれません(民法896条)

相続において(場合によって)必要となる各種法律手続や用語については「相続手続」をご覧下さい。

相続の流れについては「相続の流れ」をご覧下さい。

スペース

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高知県西部、幡多郡(四万十市、黒潮町、土佐清水市、宿毛市他)
方針: 誠実に業務を行います。
費用分割: 費用のお支払いは原則分割です。
依頼者の納得の上での受任: インフォームドコンセント(正しく充分な説明を受けた上での同意)での委任をうけます。